金木犀香のおはなし

彼岸花が咲く頃になると私が初めて働いた花屋のお父さんを思い出します。お父さんは秋の彼岸に亡くなりまし た。若かった私は最後に会った夏の日に「花屋が物日(花の繁忙期)に亡くなると忙しくて誰もその日にお墓参 りに行けないですよ。もっともっと長生きしてもらわなきゃ。」と末期がんだったお父さんに無邪気に言い、「そ りゃそうだ。長生きしないとなあ。」と笑いながら答えてくれました。お葬式の後、花屋のお母さんから「病院で ね、お父さん、毎日階段を上り下りする運動していてね。看護婦さんに頑張りますねと言われると、うちの店の 働いている子がね、花屋の忙しいときに死ぬと誰もお墓参りに行けないから頑張れって言うんだよ。きびしいね ~、頑張ろうって、嬉しそうに笑って話していたんだって」と聞きました。涙が止まらなかった私。お父さんと 一緒に車で配達に出かけると、彼岸花が綺麗だとか、ホトトギスが咲き始めたとか、町の中の花を見ては話をし ていた人でした。

彼岸花が今年は早い、いや我が家は遅いと SNS でも盛んに話が UP され、秋分の日を過ぎたあたりから金木犀 の香りの話がちらほらと。先日、久しぶりに花仲間がそろったとき、季節の露地モノの花の話から二十四節気七 十二候の話になりました。私もこのコラムの下に必ず書いています、少し気に留めて生活してみるのもいいかな あと。ちなみにその上に書いているのはフランスの共和歴、フランス革命歴ともいわれるものです。世界史で知 り「なんて文学的で素敵!」と感動してからなんとなく気にしているという。

この時、昔からの暦がすこし現代とずれているよねと花仲間が言っていて、そうね~と太陽暦、陰暦、太陽陰暦 と話は広がっていきました。休みの日、ちょっともう一度暦の本を開きみていたのですが確かにちょっとピンと こない。というか調べないと意味も分からない・・・・。そうだ!私の七十二候があっても楽しいなあと考え、 今だったら「金木犀秋風に香る」「朝顔の種膨らむ」「水引草色づく」とか、「ホットコーヒーを頼む」「北海道か らジャガイモ到来」「バター溶けずに切れる」「サンマまだ高い」。ほらね、いろいろ思いついちゃう。考え始めた ら楽しくなってしまいました。よかったら秋の夜長に・・・。

我が家の秋の花。フジバカマとトリカブト。
オリーブの実は可愛くて好き。

そういえば、前回書いた長岡醤油赤飯の話。このコラムを手にした担当 K さんが画像のレシピ通りに作って下さ り、ご家族にも好評だったと聞いてとっても嬉しくなってしまいました。K さんありがとう!

担当K・初挑戦の“長岡醤油赤飯”

フランス革命歴 Vendémiaire 葡萄月 / Panais パースニップ 二十四節気七十二候 秋分 / 蟄虫坏戸 ちゅっちゅうこをはいす 私の七十二候 金木犀香